城壁の向こうに重なる低い屋根と、家々の間をつなぐ坂道。城北洞のプクチョンマウルには、城壁の眺めだけではわからない、住まいと地域の物語があります。
城壁の小さな門の向こうへ
ソウルの城壁は、眺めるだけで終わらない場所です。臥龍公園(ワリョンゴンウォン)の近くには、城北洞へ抜ける小さな門があり、その外にプクチョンマウル(북정마을)が広がっています。景福宮の近くの北村とは別の、城壁のふもとの住宅地です。 斜面に重なる低い家々と、間をつなぐ細い路地。ソウル市の漢陽都城の案内でも、1960〜70年代の街の趣を感じられる場所として紹介されています。城壁を背景に写真を撮るだけでなく、その下で続いてきた暮らしにも目を向けたくなります。
「壁」と「月」が、祭りの名前に
この村には、場所そのものを名前にした「ウォルウォル(Wall月)」という祭りがあります。英語のWallは城壁、漢字の月は月明かり。城壁と月の下で、世代の壁や心の壁も越えようという意味が込められています。 古い家並みを残すだけでなく、人と人のつながりも育ててきた村。建物の古さとは別に、こんな名前からも地域の姿が伝わってきます。 近くには、詩人で独立運動家の韓龍雲(ハン・ヨンウン)が晩年を過ごした尋牛荘(シムジャン)もあります。小さな住宅地の周りに、暮らしと文学の歴史が重なっています。
坂道の散歩から、寺院と市場へ
城北洞の散歩は、木々に囲まれた吉祥寺(キルサンサ)、店先を眺める敦岩市場(トナムシジャン)へも続きます。住宅街、寺院、市場。それぞれに違う時間の流れる場所を歩けるのが、この一帯の面白さです。 村の路地は、住民が日々使う道でもあります。玄関の前で立ち止まりすぎず、暮らしを邪魔しない距離で。見晴らしのよい場所だけを急いで回るより、坂道や曲がり角も含めて、ゆっくり楽しみたい散歩です。

